現状の課題 — アンチパターンの教科書
/16 フラットL2、DHCP 10台のレース応答、SSID 繋ぎ替え運用、効果のない負荷分散、脆弱な管理面。既存学内LANの5つの問題を実測を交えて解説します。
既存の学内LANが抱える問題は、不適切かつ誤っているうえに効果がないどころか「100害あって1000害あり」という状態です。ここでは代表的な5つを取り上げます。
問題1: /16 の過大なサブネット
すべての症状の根本原因です。
- サブネットが /16 で切られているため、建物全体が1本のL2(同一ブロードキャストドメイン)になっている
- 通常なら /24 程度で閉じるべきブロードキャストが建物全体に到達する
- 結果、クライアントに届くパケットの 75% が自分とは無関係
これは体感ではなく実測です。同じ場所・同じクライアントで、既存LAN(左)と本PoC(右)のキャプチャを並べると差は一目瞭然です。
フィルタ表示の割合(=無関係なパケットの割合)は、既存LANが 73〜79% で推移するのに対し、PoC 側は 7〜8% に収まっています。
問題2: 大量の DHCP サーバー
- 同一ブロードキャストドメインに、確認できただけで DHCP サーバーが10台 並列でレース応答している
- 最速で応答した1台の設定で GW が決まり、出口ルーターも ISP(NURO / ぷらら)も接続ごとに変動する
- 1台のクライアントが接続するだけで10台が応答し、そのやり取りが問題1のとおり建物全体に波及するため、新規接続が増える朝昼の時間帯は特にひどくなる
問題3: 誤った無線設計と運用
利用開始時の案内にはこうあります——「当たり前ですが教室を移動したら繋ぎ変えましょう」。
何が当たり前やねん。当たり前ではありません。 接続先APの切り替えは本来 WLC(無線LANコントローラ)の仕事です。あなたは USJ のフリーWi-Fiで、エリアを移動するたびに設定画面を開きましたか?
SSID で接続制御をするべきではありません。部屋ごとに SSID を分けて人間に繋ぎ替えさせるのは、設計の不在を運用で利用者に押し付けているだけです。
問題4: 効果のない負荷分散と冗長化
出口には計3台のルーターが設置されています。
| 機器 | アドレス | 上流 ISP |
|---|---|---|
| YAMAHA RTX1210 | 192.168.0.254 | ぷらら |
| YAMAHA RTX830 | 192.168.0.253 | NURO |
| YAMAHA RTX830 | 192.168.0.252 | NURO |
しかし VRRP 等の冗長プロトコルは一切ありません。10台の DHCP サーバーが配る GW はバラバラで、大半が NURO 系(RTX830 ×2)を指し、ぷらら(RTX1210)へ向くのは2台だけでした。「割り当てアドレスによって負荷分散」をしたかったのだと思われますが、完全な誤りです。どのルーターに向かうかはリースの運任せで、障害時の自動切り替えもありません。冗長化なら VRRP、負荷分散なら GLBP を用いて構築するべきです。
問題5: 脆弱なセキュリティと運用
- SNMPv1/public で機器情報が認証なしに読み取り可能だった
- 機種・ファームウェアの特定が容易
- ファームウェアの更新は RTX830 ×2 が4年前、RTX1210 が7年前で止まっている。どちらの機種も直近2年以内に新しいファームウェアがリリースされており、更新できるのに放置されている状態
- Telnet が開放 されている
- 管理用VLANが存在せず、同一L2上のすべての端末から上記の管理面に到達できる
これらの問題に対する PoC の設計は トップページの対応表、無線設計とローミング、L2/L3 設計・DNS・オブザーバビリティ を参照してください。