方針: SSID はひとつ

本PoCの無線は、エリア全体で単一の SSID(KIC-PoC-WiFi)だけを吹きます。部屋を移動しても利用者は何もしません。クライアントが移動すると、WLC が 802.11k/v/r を用いて自動的に、シームレスかつ高速に接続先APを切り替えます。

  • 802.11k — 周辺APの情報(ネイバーレポート)をクライアントに提供し、次の接続先探しを高速化
  • 802.11v — ネットワーク側からクライアントへ、より適切なAPへの移動を提案
  • 802.11r — 高速ローミング(FT)。再接続時の認証手続きを省略し、切り替え時間を短縮

現状の課題・問題3 で述べたとおり、「教室を移動したら繋ぎ変え」は設計の不在を運用で押し付けているだけです。この仕事はコントローラに返します。

構成

要素 内容
WLC Cisco Catalyst 9800-CL(IOS-XE 17.15、Proxmox 上の VM)
AP Cisco Aironet AIR-AP3802I × 各部屋2台 × 3部屋
動作モード FlexConnect(ローカルスイッチング)
セキュリティ WPA3/WPA2-Personal + PMF(保護管理フレーム)

AP を FlexConnect のローカルスイッチングで動かすことで、ユーザートラフィックは WLC を経由せず AP から直接ローカルのL2に流れます。WLC(VM)にトラフィックを集中させない構成です。

Catalyst 9800-CL のダッシュボード。AP 2台が join し、クライアント3台が接続中

検証エリア

検証対象は3部屋+ラウンジ・廊下です。各部屋に IX2215 と AP×2 を置き、部屋間は EtherIP トンネルで trunk を延伸しています。図の赤丸と矢印が示すとおり、クライアントが room1 から廊下を経て room3 へ移動しても、ローミングによって接続は途切れません。

検証エリアのフロアマップ。room1(27ft×27ft)、room2(36ft×12ft)、room3(36ft×12ft)とLounge・hallwayの配置。赤丸と矢印は、クライアントが room1 から room3 へ移動してもローミングで接続が維持されることを示す

現在の到達点

現段階で join しているのは一部のAPに留まっており、エリア全域のシームレスローミングは設計上の到達目標であり、現時点では未達です。各部屋の AP join を完了させ、マルチAPローミングの本格的な検証に進むことが残課題です。

ただし、教室移動でありがちなスティッキークライアント問題——遠ざかった元のAPに掴まり続け、低速度のまま張り付く端末——への手当ては、全AP展開を待たずに済んでいます。WLC が低RSSI・低レートのクライアントを検知して**強制的に切断(Optimized Roaming)**し、より良いAPへの再接続を促すためです。しがみつく端末は自動的に振り落とされます。